鏡の中で燃える炎

チャンネルNECOで毎週録画していた「ミラーマン」と「ファイヤーマン」だが、意外にも途中から「ミラーマン」の方が脱落してしまった。ワシの中では円谷英二没後の同プロ製作テレビシリーズの中では出来の良い方の部類だと思っていたのだが、改まって見てみると後半の崩れ具合が自分の記憶以上に酷くてほんとにがっかりしたからなのである。




番組スタートから1クール目くらいまではあきらかに「ウルトラとは違うもの」を作り手の方も目指しているのがこちらにも伝わっていたし、ドラマ展開に於いても京太郎と絡む女性ゲストか多かったせいもあるのだが、なんとなくダークかつアダルトなムードが多少なりとも存在していて、これは数多あるカイジューものとはちょっと違うんじゃないの?という空気がびしばしと充満していたような気がするのである。

・参考動画 第一話「ミラーマン誕生」


たとえば「ウルトラとは違う」という特撮部分の演出などでは侵略者であるインベーダーの存在があまり明確にされておらず、スーツにグラサンで全員が没個性化された存在(前にも書いたけどこいつらはまんま「マトリックス」のエージェントの元ネタに違いない)として活動をしており、窮地に陥った際には彼ら自身が怪獣へと変貌を遂げるというのがまず不気味で面白い。

2話でキティファイヤーにメタモルフォーズしたインベーダーの見せ方などは顕著で、まず等身大の状態で顔から(最初に口の部分が豪快に合成で入ってくるのだが、これが楳図かずお調でたいへん恐ろしい)変わっていき、紅蓮の炎に包まれると巨大な火焔怪獣と化すというこのシーンは今見ても「おおー」と唸ってしまうトクサツ的名場面だと思うのだ(誰のセンスによる物かはわからないが、おそらく中野稔氏のものによるものではないかと想像)さらに同じく巨大化したミラーマンとの格闘に於いてもあまり殴り合うようなことはせず、双方が静態した状態から至近距離で光線を打ち合う、それらを局所バリアでかわすといった超接近戦を展開するという擬闘シーンもそれまでにはない物だった(不思議な緊張感があってなんとなくだが西部劇の決闘シーンにもイメージは近い)

そして倒された怪獣は爆発ではなく緑の炎に包まれて消えていくという(これは変身前のインベーダーたちの断末魔と同じ描写)爽快感のない怪しげな最後というか、得体の知れない敵とのたたかいはまだまだ続くのだろうというのをビジュアルだけで視聴者に植え付ける様な、そういう絵作りをしていたとも思うのである。特にこの初期数話は怪獣のデザインそのものが動きにくい物だったせいもあるのか(^_^;)そういう静かなる戦いがしばらく続いていたので余計印象が強かった。今自分がオッサンとなってこの手の物を見返すときって、実はそれほど一生懸命格闘シーン(特に巨大ヒーロー物では)なんかは見ていないのだけど、ダークロン・マルチ・アイアン・インベラー等どこまでも続く「動かない」ヤツらとの戦いは今見たときの方がガキの頃より数倍インパクトを感じてしまった。



この傾向はゴールドサタン登場あたりまで続くのだが、たぶん当時のリアル視聴者(ワシも含めた(^_^;))である子供たちには食いつきが悪かったのだろう。独特だった作品世界は2クール目以降急激に変化を見せ始め、正体の見えない不気味な存在だったインベーダーは安い半漁人のような正体を「あっさり」と見せ、どこにでもある凡百な悪の組織と同じように作戦を語り墓穴を掘ることを繰り返したり(定番と言えば定番だが「○○をこうしてああしてやる!それを止めることが出来るのは○○だけだあ!」と全部喋っちゃうアレね)怪獣デザインの方ももう通り一辺倒の物しか出なくなったし、あれほど緊張感のあった戦闘シーンでもふつーの怪獣プロレスが展開されてしまい、ハッキリ言ってなんだかなあという感じなのだ。

そして中盤以降の単なる科学チームだったSGMにジャンボフェニックスを与えて軍事チーム化し、ミラーマンに体内爆弾という弱点が加わったというイベント的展開は活劇面では賑やかな物となったが、その反面やっていることはまったくのウルトラの焼き直しであるという皮肉な結果になってしまった。スタート部分がほんとに良かっただけに(くどい様だが10話までなら今放送してもそんなアナクロ感はない)ホントに勿体ないなあと、今になってワシは思うのである。

とは言いながらその頃リアルガキだったワシはジャンボフェニックスも好きだったけどね(^_^;) 



そして「ファイヤーマン」の方だけど、これが思っていた以上に面白いのだ。これまでは岸田森が脚本を書いた「地球はロボットの墓場」(こんなんよう子供番組でやったなと思うわ・・・)だけが傑作であとはたいしたことはないとファンコレ的思想を植え付けられたせいもあったけど、こちらはなんといっても役者の配置が抜群に良いのが面白く感じてしまう所以なのかもしれない。

SAFというチームの設定は全員が博士号を持っている科学者と言うことになってはいるのだが、誠直也と平泉征はヤクザの鉄砲玉にしか見えないし、隊長の陸五郎も同じく若頭風、助手のマリちゃんなど明らかに情婦のキャラだし(__;)そのアンマッチぶりが笑えるのだが、そこにまんま科学者に見える岸田森がいるというのが不思議な説得力を生んでいるのだろう。キワキワなところでなんとかチームとしてのバランスを保っている。

各エピソードではそんな特筆するほどの良くできた話というのはないけれど、そのメンバー間での会話が実にはまっているというか芝居臭いところがあんまり感じないというか。先日放送のあった「悪魔の海を突っ走れ!」なんか潜水艦で現場に行く「途中」の描写というのが長々とあって、流行歌を口ずさむ岸田森に「歌もイケるんだな!」と声をかける陸五郎とか、これって楽屋じゃねえの?と思うようなシーンがやたらと入っていたりするあたりが凄いなと(普通ならカットされるようなシーンだけど、ちょっとだけタランティーノ風演出の先駆けみたいなところもあったり・・)

とにかく本編では岸田森の絡むシーンのすべてが楽しく見えて仕方がないのだ(^_^;)結局この番組の色と魅力はこの人のカラーによる物が大きいのかも知れないが、それ以外でも特撮シーンの気っぷの良さというのも見所として大きい部分だ。

おさらくは先の「ミラーマン」と比べても予算的には苦しかったのだろうと思うが、毎回特撮シーンは海の傍の建物が全くないところでの戦いになっており、障害物がないせいかこれがスーツアクターの動きを大きくて豪快な物にしているような気がするのだ(ファイヤーマンの中身はミラーマンと同じ西条満さんだが、アクションの軽快さが全然違う)

そして一撃必殺の大技ファイヤーフラッシュ(後半はファイヤーダッシュ)の視覚イメージと実際のアクションが見事に一致していて、怪獣を倒したときの映像的カタルシスというのは特撮番組史上かなり上位に来るのではないだろうかと思っている(個人的ベスト1は「宇宙刑事シャリバン」のシャリバンクラッシュ

まあそんなわけで(^_^;)特撮ファンとして覚醒を始めた十代の頃、ワシの中ではミラーマン>ファイヤーマンという評価はこの何十年変わることはなかったのだけど、まさかここへ来てこのような変化が生じるとは自分でも少し驚いている。
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