次は何色でしょう

BSプレミアムで放送のあった「巨匠たちの“青の時代”スタンリー・キューブリック 俺の眼を見つけた!」をやっとこさ視聴完了。その内容は映画監督としてその存在を知らぬ者はいないであろうと思われる数少ない巨匠/スタンリー・キューブリックの若き日を紹介したドキュメンタリーである。

もともとこの人は報道系スチルカメラマンとして名を馳せてから映画界入りしたそうだが、最初に世に出たのが雑誌の「Look」に掲載された大統領死亡のニュースを見て悲しんでいる男性の姿を捉えた写真だったとされている。以前なにかの書物でその顛末を紹介されているのを読んだことがあったのだけど写真の現物は今回初めて見た。それはぱっと見た瞬間何かの映画のポスターかロビーカードではないかと見紛うほど構図がばっちりと決まり、某かの意図を感じられるかのようなあまりにも「出来すぎた写真」となっている。

当時撮られた他の写真も同様の印象。どう見ても全部が映画の1シーンだよ・・・

さらにはそういう写真を17やそこらの年齢でモノにしてしまうと言うそのセンスにも驚嘆してしまうのだが、番組が進むにつれ判明していくのはどうやら彼の「作品」には今で言うやらせ的なスパイス(と言ってもそれは事実を歪曲して伝えるような類の物ではない)が加わったモノであるというのがわかってくるのだ。

それは本来報道カメラマンとしてはやってはいけないことなのだろうけど、自分が思い描くベストな構図やアングルを求めてよりよいイメージを見ている人に伝えようという「演出家」としての姿勢(もっと言えば素養)が前面に出ていたと言うことなのだろう。結果としてこの人が場面を切り取る写真家から映画監督へと立場をシフトしていったのは流れとして当然のように思える話でもある。

番組は映画監督になった直後あたりで終了するのだが、キューブリックの才人ぶりがあらためて伝わる良いドキュメンタリーだなと思えたし、これからもいろんな映画監督でこういうのやってくれると嬉しい。ぜいたくを言えば”○○の時代”部分の色を変えて何回かで生涯を取り上げてくれたらもっといいけどね(^_^;)

あとキューブリックと言えば僕は好きな監督の五指に必ず入る人でもあるのでもう少し作品解説なんかがあっても良かったかなとは思うが、本編で少し流れていた「シャイニング」の1シーンがあまりにもキレイな画質だったのにたいへん驚いてしまった。アレは今売ってるブルーレイのマスターと同じ物なんだろうか・・・もしそうなら真剣に買おうかなと思ってるほどだ(持ってるソフトは何年も前に買ったSD画質で4:3のものだが画面は少しぼやけ気味であまり美しくない。メイキングがあるから手元に置いてあるけど)

実は僕にとってのキューブリック体験はこの映画から始まっているのだ。1980年の劇場公開時、当時中学生だった僕はこれを映画館で見て(ウチの地方では同時上映が「チェーン・リアクション」(キアヌ・リーブスの映画ではナイ(__;))というB級アクションながら今日的ネタを持った快作だった)そのあまりの恐ろしさに情けない話だけど「早く家に帰りたい~(T_T)」と真剣に座席で震えていたのである。そんな映画は僕の場合未だこれだけ。

その受けた恐怖の感覚とはそれまでに見たホラー映画のようなびっくり箱的な驚き(突然ワー!っと来る感じ)ではなく、もうこの映画の内容通りに閉じ込められた広大な建物の中で「何か起こるんじゃないか」と言ったこれから発生する”かもしれない”事態に対する不安感から来ていたように思っている。

たとえて言えば仕掛けは極端に少ないが距離が長くセットの出来があまりにも良いお化け屋敷を通っている感覚に近いかもしれない。「シャイニング」という作品はまさにその未知への恐怖という単発で終わらない果てしなく続く不安感と戦わなければならない映画でもあったのだ(じわっと何かが出そうな気配を感じているときに突然「水曜日」などと(__;)ただの日付変更の描写が入ったりするのがより怖かった)

なので書いてしまえばクライマックスに進むにつれていろんな事が動き出すのだが、実際に事が起こり始めると恐怖の度合いは薄味になってくると言う、それまでに感じていた不安感からは少し解放されていくのだけど、以降はジャック・ニコルソンに対する「壊れた人間と接することの恐怖」へと怖さの種類がまた変わっていくのである。(あの超有名な場面(見た人ならみんな「ハイハイ」と頷いてくれるとこですね)は何度見てもぞくっとしますな(__;))

懲りに凝った映像の面白さ・美しさに加えてこういう色んな形の恐怖の呈示等々、普通のホラー映画ではまず味わえない濃い濃い魅力を内包した作品だと僕は思っているし、人によっては異論もあろうが「2001年」「博士の異常な愛情」なんかより自分の中ではランクが上のキューブリック映画だと今でも思っているのである(やはり思春期の刷り込みは効果は強力だ(__;))

と、気がつけばなんだか「シャイニング」の話がメインになってしまった感はあるけど(^_^;)今回の番組は大いに満足できる内容だった。BSシネマで「シャイニング」含みのキューブリック特集をやってくれたら買わなくて済むのだが(ここでやるのはだいたい「2001年」ばっかだからなあ)果たして待ちきれるだろうかねー・・・

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