ロープの吊し場所は特に考えてなかったんだがー

と、長谷川和彦監督の口調をマネたタイトルで始まる「太陽を盗んだ男」のはなし。

 

今月の日本映画専門チャンネルで放送されているのを見直したのと(ラックの何処かにDVDがあるはずなのだが敢えてハイビジョンで再録画)これまた連動企画になっている「岩井俊二presentsマイリトル映画祭・長谷川和彦」をセットで見た。

ふと振り返ってみるとこのブログではホントに自分の好きな映画(所謂ベストムービーに値する)の話というのはあまり書く機会がなかったのだけど、この「太陽を盗んだ男」は今すぐ日本映画で10本選べと言われれば間違いなくその中に入ってくるほど僕は気に入っている作品なのである(タイトルバナーのジュリー写真参照。ここで使っているフォトはそういう映画の集合体となっている)

そのストーリーは至って単純だ。”中学校の理科の先生が原子力発電所からプルトニウムを盗み、それを基にして己の知識とサラ金からの借金を頼りにお手製原子爆弾を作り、日本政府・警察と対峙するというそういう話、以上!”・・・と、この短い粗筋紹介の間だけでも「そんなアホな!」と二回は言いたくなる無茶で荒唐無稽な内容である。

それを冗談にしないで大真面目なエンタテイメントに仕上げたこのセンスは従来の日本映画にはなかったものであり、またハリウッド風活劇に近い空気も内包していた。例えば同じような内容をありがちな邦画的ノリで作ったとしたら、もっとウェットで事件に対する動機付けであるとか不要な思想的オシツケみたいなものがどんどん入ってきて、それが良い方に転んだとしても「まあまあ良い映画だったよね」という程度のよくある感想しか残らなかったと思うのである。

「太陽_」がそうではない突き抜けた印象を与えるのは、主人公・城戸(沢田研二)がどうしてこんなことやったのかという描写/説明等が一切無いことと、そのあおりで映画本編の隅から隅までが半ばゲーム感覚で描かれていることにより”矛盾点を突っ込むことの意味のなさ”を生み出しているという、結果的に(たぶん作っている方にそんな意図は無かったと思うけどねー(ーー;))ウェルメイドなものに「なってしまった」という偶然のすごさを感じられるところにあった。

キャストも主演の沢田研二/菅原文太は言うに及ばず脇役含めてひじょうに魅力的で、喜々として核爆弾の解説をし続ける佐藤慶の学者とか常識外の事にまったく対応できない北村和夫の警察庁長官、冒頭のバスジャック犯伊藤雄之助等々、一度見たらしばらくアタマから離れない強烈なメンバーが揃っているのも良いのだ。

またこれは個人的な話となるが「太陽_」公開当時僕は中一で、それまで劇場で見た日本映画と言えば怪獣映画とアニメくらいしかなかったけど、初めてそういう映画じゃない作品に対して「面白い!」と思えた作品でもあったのだ。その後数年してから僕の師匠とも言える人だったライターの故・富沢雅彦さんが書いたコラムに”「太陽_」は怪獣の出ない怪獣映画である”という一文が載っていて、目から鱗というかオレが面白いと感じたのはまさにこれだったのか!と一気に合点がいったこともこの映画の特別加減をよりアップさせていたのだった(核の力を手にした城戸はまさにゴジラであり、その怪物が本物のゴジラと同じように東京の至る所で国家を相手に暴れ回るというのが正に怪獣映画的ではないかという趣旨だった)

他にもとにかくこの映画はどこを見てもツボにくるセリフ・シーンが本当に多くて、いちいちカッコ良いなと(と同時に笑ってしまうセリフも多数(__;))思えてしまう場面が沢山あるのも好きなところになっている(「この街はもうとっくに死んでいる」「ひたちの”びーばーるーむえあこん"ってやつがいいらしいぞ」等々←見てない人にはなんのこっちゃわかんないと思うけど興味持たれた方は是非ご確認を)

それと同時放送の「マイリトル映画祭」では長谷川監督に様々な話を聞いているのだけど、シナリオタイトルの変遷がいろいろあったという件でwikiには載ってない「プルトニウム・ラブ」(ーー;)が候補名だったというにのちょっと笑った。ちなみにこの番組は今月が「前編」で来月に「後編」が放送されるそうだ。

岩井俊二映画祭 presentsマイリトル映画祭「長谷川和彦映画祭!」【前篇】
岩井俊二映画祭 presentsマイリトル映画祭「長谷川和彦映画祭!」【後篇】

こんなに個性的な映画を撮った長谷川和彦監督は、しかしながらこれ以降一本の映画も撮っていないまぼろしの映画監督になってしまっている。通算でも「青春の殺人者」(この映画は自分の中の”おっぱい映画一位”(@@;)となっているがそのことはまた別の日に。言いがかりも甚だしいが「おっぱいバレー」の綾瀬はるかはこの映画を見て原田美枝子の爪の垢でも飲んでおけと言いたくなる)とこの「太陽を盗んだ男」と合わせて二本しかないのが心底勿体ないなと思うのだが、そろそろ何処か侠気のある映画会社がこの人にメガホン取らせてやって欲しいと思いますわ。

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2 Comments

シャオティエン  

「おっΠバレー」観ないでコメントするのもアレですが言わんとしていること、何となく私も同感です。やはり、昭和時代の女優は凄いですネ。相手役の水谷豊は役得でしたね。羨ましいです。

2012/06/12 (Tue) 20:27 | REPLY |   

しろくろShow  

>シャオティエン さん

コメントありがとうございます<(_ _)>

確かに素晴らしいモノを持っている人(特にその人が表現者である場合)の出し惜しみほどもどかしく感じるものはありませんね。

それこそ綾瀬はるかなんか160キロの剛速球を持っているのに(__;)変化球ばっかり投げている投手のような印象を受けてしまいます。

もっともこのへんはおっさんサイドの完全なる大きなお世話ですが(~_~;)海外女優さんたちの脱ぎっぷりのよさをみていると日本女優ももっと頑張れと言いたくなりますな。

「太陽_」のヒロイン池上季実子もスピードは150キロに届かないものの(__;)大林宣彦監督の「HOUSE」で綺麗なヌードを披露してましたし(あのキャストだとホントに剛速球持っていたのは大場久美子なのですが・・・)

いかん、こんな話になるといくらでも書いてしまいそうな自分がコワイ(ーー;)

ちなみに「青春の殺人者」の原田美枝子は私の邪スピードガンによりますと170キロに迫る勢いでした(ほぼチャップマン並み)

2012/06/13 (Wed) 16:19 | REPLY |   

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