夢見るように眠りたい

26日月曜の仕事終わりに「風立ちぬ」を見てきた。
 

僕は基本外に出かけるときは建物の中であれ外であれ、人で溢れているような場所に好んで行こうとは思わないヤツなので(我慢できるのはせいぜい野球場くらいかな)月曜のこの時間(18時台)ならゆっくり見られるだろうと思い疲れた体にむち打って行ってみることにしたのだ。するとまさに希望通り客入りはぱらぱら、僕の席廻りは左側のだいぶ離れたところに年齢差がかなりありそうな謎のカップルが一組いただけで、それ以外は見通しも良い。そんな鑑賞コンディション最高の中始まった本編は、じつにじつに不思議な捉え所の無い映画だったという印象を僕に残したのであった。

原作を未読だし堀辰雄にも零戦にも興味の無い自分がこの映画果たして楽しめるのだろうか些か不安も感じていたが、見終わった瞬間はたぶん知っていても同じような感想にはなっただろうなと(ーー;)思ってしまった。今作の場合原作はあくまでも映画の器であって映画の中身自体は宮崎駿監督の趣味嗜好衝動が全開という、これまた「パシフィック・リム」とは違う毛色のプライベートフィルム臭が濃厚に漂っていたのである(オレってこういうヤツなんだよという自分語りを上映時間のすべてを使ってされているかのような感覚?)

そこには己の考える「理想の仕事」と「理想の女」の姿を愚直且つてらいもなくさらけ出してみました、みたいなものが現実と夢の境目無く描かれている(これが文字通り夢と現実の場面の区別が画面上で全くされておらず、演出上の簡単な場面転換もないからしばらく画面を見ていないとどっちかワカラナイという荒っぽさで)

「仕事」はとにかく自分の好きなこと、この場合だと主人公が子供の頃から抱いていた飛行機に対する夢を自らが最高の航空機を作り上げることによって完遂させようとする、職人・技術屋のかくあるべき姿を夢想しているようにも思える。また、真の仕事師ならば思想や廻りの環境、時代の要請や状況などはおかまいましでそれに猛進(盲信?)するのが良いのだという風に言ってるようにも感じられたのである。

結果的に彼の夢が一部戦争に担ぎ出され沢山の命が失われることになったのは時代が良くなったんだよと言うアイロニーの部分として多少は表現されているけど、本音の部分ではこの時点で思い描く最高の飛行機を作ってきたのだという自負とプライドと満足感の方が大きいように見えないこともなかった。なのでこの映画を見て右傾化だの戦争賛美などと文句を言っている連中はよほど目が曇っているのか、或いはこの暑さで脳が心太になっているかのどちらかなのだろうとも思ってしまったよ。

「女」についてはもう70過ぎてこんな青臭いことを理想と思える宮崎さんが逆に凄いなと(ーー;) たった一度の劇的な出会いからずーっと自分のことを思い続けてくれていた人とこれまた偶然再会して(しかも次郎本人は特に会うための努力をしていたわけでもないのに)自分の妻になり、結核という病を押してでも自分の側にいたいと言ってくれる(そして命がけでセックスの相手もしてくれるような←ジブリ映画でこの手の描写って初めてかも)健気な女の人が良いんだ、ってなかなか正直には言えないと思うけど、そういう人を愛おしいと思いたいというのだけはすごい伝わってきたような気がしている。

だから当時は不治の病で尚且つ空気感染のリスクもある結核を患っている妻でも常に側に置いて顔を見れば抱きしめ唇を重ね、みたいなのは「この女のためなら一緒に死んでもイイ」と心底思っているからだろうし、この辺の純愛感というのは男ならわからないではないのだ(脇目もふらず一途に自分のことだけを愛してくれて、さらに美しいまま思い出の中へと消えていく女が素晴らしいなんてのはオトコの傲慢なファンタジーだけどね)

で、見ていて困ったのはそういう監督個人が自分の好きなことを語っている映画なのだろうというのはなんとなしにわかるのだけど、話としては最後までさほど感情移入が出来ないまま終わってしまったような気がするのだ。なんか時間の経過と物語進行が終始淡々としていたせいか殆どの台詞が抑揚無く喋られていたせいかはわからないが(次郎役の庵野秀明の声は最初の一言二言が棒読み過ぎてビックリするけど(ーー;)この役には合ってたんで途中からはそれほど気にならなかった)最後は「あ、もう終わりなの?」と言った余韻もクソもない終幕で劇的な雰囲気が殆ど無いのね(相変わらず絵に力があるんでそこだけで引っ張られる魅力はあるが)

ここ数年の宮崎映画ではアタリマエのようになっている最低限の説明すらしない不親切さ、事前に予習(原作を読む、関連番組を見る、特集記事に目を通すと言った諸々の準備)をしないと映画のイメージはなかなか掴めない事等々が「風立ちぬ」でも健在だったと僕は思ったけど、ひとつだけ納得いかないのは元々こういうわかりにくい作風の人じゃなかった人がそれを敢えてしないというのは、言い方は悪いけど手抜きなんじゃないかと言いたくなるときもあるのだよ(わかる人だけ楽しんでくれたらいいよと客を選ぶようなやり方は正直あまり感心しない)

と、最後まで面白い/面白くないという簡単な話のしづらいなんとも不思議な映画ではありました。感想もとっちらかった捉え所無い感じになってしまったなあ・・・(__;)
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4 Comments

ポール・ブリッツ  

いろいろな場所で書いていますが、宮崎駿監督の新作は、

「ブタがティーガーで戦争する」映画

を撮るまで見ないことに決めています。

可能性は薄いがゼロじゃない、と自分を慰めています(^^;)

2013/08/31 (Sat) 20:17 | EDIT | REPLY |   

しろくろShow  

気がつけばミリタリー作家

>ポール・ブリッツ さん

コメントありがとうございました<(_ _)>

「豚の虎」の話はネット上の記事で見ましたが零戦の次は戦車なんですねー・・・(ーー;) 後は潜水艦とか航空母艦とかに流れていくのでしょうか(^_^;)

期待は薄いけど次は出来ることならもう少しお客さんに優しい映画の作り方をして欲しいと思います。

2013/09/01 (Sun) 10:13 | REPLY |   

ポール・ブリッツ  

とうとう引退宣言してしまいましたよ監督!

ここは宮崎吾朗監督に一肌脱いでもらわなきゃ。

あの人がクソみたいなアニメを作れば、宮崎駿氏もいたたまれなくなって引退撤回を……(笑)

2013/09/02 (Mon) 21:26 | EDIT | REPLY |   

しろくろShow  

親子でやったらどうでしょうね

>ポール・ブリッツ さん

いっそ親子で共同演出という形にしてみたら、もう一回くらいやるよ!って言う話にならんかなと思っていますが、個人的にはもういいよ、ご苦労さんと言いたい気持ちもあります。

2013/09/03 (Tue) 20:05 | REPLY |   

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