SFと書いて"少し・不思議"と読む

IMG_0715.jpg数日前に「プロフェッショナル・仕事の流儀/漫画家.藤子・F・不二雄」という番組を見た。

藤子ファンの僕が(って、このブログでは過去あまり書いてなかったけど、実は40年来の大ファンなのである)見ても今回はかなり面白い構成になっていて、あーまたこのネタかよみたいな既視感は多少なりとも薄くなっているような気がした。

話として知っている事柄はあれどもこれだけ当時の関係者に取材して生の声を紹介し、その上生前の藤子Fさんの肉声や編集者に宛てた創作に対する悩みを記した手紙の公開であるとか、そういった偶像ではないクリエイターとしてのリアルな部分をここまで見せた番組は珍しかったのではないだろうか(こういうアプローチになるのはさすがにNHKだなと、組織としてはあんまし好きなとこじゃないけど(^_^;)今回は褒めてあげたい気分)

そして番組中僕がもっとも嬉しかったのは70年代に入り劇画ブームの煽りで少年誌(最初の大ヒット「オバケのQ太郎」は少年サンデーで連載されていた)を撤退することになり、失意の中で初めて書いたオトナ向きのSF短編「ミノタウロスの皿」の話だった(編集者から「ビッグコミック」への掲載を勧められたとき最初は「子供漫画しか書いてこなかった自分の絵で大人が読んでくれるはずがない」と断ったそうだが「何を書いてもいい」と言われてチャレンジする気になったとか)

14991343.jpgこれがどういうマンガだったのかというのは上のリンクを見て貰うとして、この藤子Fさんの隠れた代表作である「SF短編シリーズ」を最初に読んだときは衝撃的だった。僕の場合は6年生の時にマンガ好きな友人が貸してくれた「宇宙人」(←左写真参照)という単行本で知ったのだけど、これがホントに藤子マンガなのかと思うほどどの作品にも重い重いメッセージや風刺が充満していて、12歳のガキにとっては受け止めるだけで精一杯なほどインパクトは強烈だったのである。

SF短編は他にも何冊が単行本が刊行されていて「コレもっと読みたい!」とは思ってはみたものの、友人もそれしか持ってなかったので後は自分で探してみるしかなかった。しかしこれがなかなか手に取るのが難しく、たとえば当時創刊されたばかりの「コロコロコミック」では藤子マンガの過去作(「ドラえもん」をメインに「ミキオとみきお」や「21エモン」等)が何本も掲載され、それはそれでありがたい存在だったのだけど残念ながら対象年齢の高いこの短編シリーズは入っておらず、読みたければ単行本を買うしか術はなかったのだ。もう地元の本屋を一軒一軒訪ねては少しずつ買い集め喜々として読んでいたモノである(同じような毛色の「中年スーパーマン」というのもこの時期)

その後87年にそれらの短編を纏めた最初の愛蔵版が出版されて一気に大人買いしたが「ミノタウロスの皿」はそこで初めて読んだ。21エモンと同じ顔をした(__;)主人公の辿る皮肉なストーリーが絶望的なまでに描かれていて、そのうえしっかりブラックなオチまでも付いているというこのマンガにまたも打ちのめされ、こんな作品を書けてしまう藤子F先生はなんて凄い人なんだとひたすら驚嘆したものだった。好きだから言うわけじゃないけど間違いなく掛け値なしの傑作だったと僕は思っている(今売られているモノでは「藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1 」に収録)
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結果的にこの最初のSF短編だった「ミノタウロスの皿」が内外共に評価を受け、藤子Fさんの中で元々彼が好きだった「SF」と言うジャンルをご自身が自嘲気味に言っておられた「お子様ランチの絵」で十分鑑賞に堪えうる作品になったこと、そこから「初めからウケ狙いな作品ではなく、自分が好きで面白いと思うことを信じて書けば読者にも伝わるハズだ」という自信に変わり、それが「ドラえもん」へと繋がったという話である。

番組終盤はもう「なるほどなー、うむー」と言う言葉しか僕の口からは漏れず(ーー;) ひさしぶりにこの手のドキュメンタリー見て感動したし、出来ることなら藤子マンガを読んだことない人にも是非見てもらいたいなとも思った。

で、実はその機会がさっそく訪れてきて(^_^;)あんまり時間はないのだがなんと明日10/25の金曜日に再放送があるのである。台風情報で吹っ飛んでしまう可能性もあるが、たまたまこのブログ読んで放送のこと覚えてくれてる人がいたら騙されたと思ってチャンネルを合わせていただきたい。

あらためてオンエア情報 10月25日(金)午前0時40分~午前1時28分

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12 Comments

ポール・ブリッツ  

個人的には「ウルトラスーパーデラックスマン」押しです(^^)

安直な「正義の味方」というものが、いかに「正義」を暴走させるかを描かせたら藤子F先生の右に出る人はいないと思います(^^)

今の日本を見たら、どんな厭戦反戦風刺SFを描いてくれたかと思うと残念です。まあ、ヘイトスピーチ乱れ飛ぶ現代を見たF先生の絶望を考えると、すでにお亡くなりになっていたことはある意味幸運かもしれませんが……。

2013/10/25 (Fri) 11:45 | EDIT | REPLY |   

しろくろShow  

あれも良かったですねー

>ポール・ブリッツ さん

こんばんは、コメントありがとうございます_(._.)_

「ウルトラスーパーデラックスマン」も同じ10代の頃に読みました。アレもオチが見事でしたね(^_^;)

それと僕は今の混沌とした時代にこそこういう藤子F先生的な感性と言いますか、何物に対しても正面じゃなくて斜めから物事を見る視線というのが合ってるんじゃないかという気がしています。

個人的には58歳と言う若さで急逝されたのはホントに残念でした。

2013/10/25 (Fri) 20:25 | REPLY |   

晴雨堂ミカエル  

中央公論の愛蔵版、私も揃えています。

 私も小学生の頃に読んで衝撃を受けたクチです。

 「流血鬼」が一押しです。短編なのに、ゾンビ映画の長編を観ているかのような迫力ある展開、ラストのオチも藤子・F・不二夫氏らしいホノボノ結末。
 
 「箱舟はいっぱい」もホノボノとした雰囲気なのにリアルに怖い話でした。子供を持つ身になってから読むと、怖いよりも哀しくて目頭が熱くなります。
 
 それから、彼が描く女性は、妙に色気がある美少女ですね。

2013/10/25 (Fri) 23:00 | REPLY |   

ロッカリア  

まんが道!

こんばんは。
「まんが道」と言う単行本を、超分厚い本にまとめた全4巻は私の愛読書でありバイブル。
この本を読み返す度に、情熱、と言う感情が心の底から湧き上がって来るのをおぼえます。
本当に、センス・オブ・ワンダーを感じさせてくれる人は希少でした。
録画してあるので、ゆっくり観たいと思ってます。

2013/10/25 (Fri) 23:35 | REPLY |   

しろくろShow  

あれはマシスンのヤツより

>晴雨堂ミカエル さん

こんばんは、コメントありがとうございますm(__)m

「流血鬼」確かに良かったです。あれはたぶんリチャード・マシスンの「地球最後の男」からインスパイアされたマンガだと思うんですけど、本家のあちらより娯楽度は高くなってましたよね。

あと僕は「ノスタル爺」が好きで、今オッサンになった年齢で読み返すとホントにしみじみとして涙出そうになるときもありました。

>妙に色気がある美少女

そーなんですよ、なぜかこの短編シリーズは不思議と艶やかな感じになってますよね。

2013/10/26 (Sat) 22:16 | REPLY |   

しろくろShow  

ひさしぶりにアタリでした

> ロッカリア さん

こんばんは、コメントありがとうございます_(._.)_

この番組で故人が取り上げられる事ってあんまり記憶にないんですけど、だからこそ廻りのにいた人たちの証言や残された物であらためて人物像を掘り起こそうという演出が目新しく感じたのかもしれません(なんとなく昔買った「OHの肖像」という大伴昌司の本を思い出してしまいました・・・)

あ、それと別件ですがご紹介いただいていた「トラウマ日曜洋画劇場」無事買えました。本屋に一冊しかなかったのを手にとってレジに走ったんですけど内容は楽しかったですねー(^^)

2013/10/26 (Sat) 22:24 | REPLY |   

無様な愚か者  

こんにちは。

>ひさしぶりにこの手のドキュメンタリー見て感動したし、出来ることなら藤子マンガを読んだことない人にも是非見てもらいたいなとも思った。

出張先でホテルに宿泊したときに偶然、チャンネルを回してて観たのですが、不覚にもがっつり見入ってしまいました。

「ミノタウロスの皿」昔、読んだ事があったのですが、まさかあの作品がターニングポイントだったとは露にも思いませんでした。

なにより「ドラえもん」が一旦、最終回を迎えていたというのも恥ずかしながら知りませんでした。
本当、多くの人に見てもらいたいドキュメンタリーですね♪

2013/10/26 (Sat) 23:08 | EDIT | REPLY |   

映画カッパ  

ソウル漫画

 藤子不二雄Aさんの43年かけた「まんが道」も完結したそうで、藤子不二は、日本人にとって「ソウルフード」のような存在ですね!?

2013/10/26 (Sat) 23:39 | REPLY |   

しろくろShow  

あの6巻から7巻の流れは

>無様な愚か者 さん

こんばんは、コメントありがとうございます<(_ _)>

ドラえもんの最終回ですけど、ちょうど6巻の末に収録されている"さようならドラえもん"が私の読んでいた「小学三年生」三月号に掲載されて、7巻の最初の話"帰ってきたドラえもん"が「四年生」の四月号の載っていたと思います。

リアルタイムで読んでいた一人ですけど、そんな裏事情なんか当然知らないんで(^_^;)進級してドラえもんがまた読めるとわかったときはすごく嬉しかったですね。

あの二つのエピソードはやっぱり思い入れもありました。

2013/10/27 (Sun) 22:17 | REPLY |   

しろくろShow  

A先生の全集も出して欲しい物です

>映画カッパ さん

こんばんは、コメントありがとうございました_(._.)_

「まんが道」は魂が疲れた時にふと読み返したくなる漫画ですね。僕はトキワ荘に出てくるまでの高岡時代が特に好きでした(^_^;) 

A先生もご健在なウチに全集刊行してくれないかと思います。「魔太郎」と「変奇朗」を買い直したいんですけどねー・・・

2013/10/27 (Sun) 22:26 | REPLY |   

晴雨堂ミカエル  

時期的には「オメガマン」への反発?

 謎のウイルスを「マチスンウイルス」と設定したり、明らかにリチャード・マシスンのオマージュでしょうが、私は時期的にいってチャルトン・ヘストン主演「オメガマン」への反発もあるかな、と思っています。

2013/10/29 (Tue) 21:54 | REPLY |   

しろくろShow  

なるほど

>晴雨堂ミカエル さん

こんばんは、コメントありがとうございます<(_ _)>

藤子Fさんなりの「俺ならこうする」みたいな感じでしょうか。確かに「流血鬼」の方が価値観の転換のさせ方は「オメガマン」より遙かに旨かったと思います。

一瞬「あら?これってハッピーエンド?」みたいな気にもなってしまいましたし(と、同時に事の善悪なんて180度見方変えたらどんな解釈も出来るというモノスゴイ皮肉も感じましたけど)

2013/10/29 (Tue) 22:49 | REPLY |   

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