機体に輝く金色の鷲

と、そんなナツカシ主題歌を思い出させることは最後まで無かった「永遠の0」を見てきたはなし。

自分の好みから言うと戦争映画や西部劇というのは昔からそれほど得意な分野では無く、また今作のように事前宣伝で「泣けた!」「感動しました!」と涙の押しつけを感じるようなものも敬遠しているきらいがあるので(私のようなひねくれた輩だとこの手の宣伝文句を見るにつけ、そもそも人様の落涙ポイントを勝手に決められてたまるかアホんだら!と、つい憎まれ口の一つも叩きたくなってしまうのである←性根が歪んでるなあ(ーー;))普通なら観に行くこともなかったのだけど、今回は原作者・百田尚樹のファンでさらには岡田准一大好きな妻のお供として同行することとなったのだった。

しかしこういうイレギュラーな事情で好みではない映画を見たときこそ嗜好の幅が拡がるのでは無いかと都合良く思っているところもあるので(ーー;)そこは真剣に観賞に臨んできたつもりである(ついでながら原作も未読)それで思ったのはコレは自分が思い描いていたような涙と感動の押し売りみたいな映画では全然無くて、むしろ自分の祖父がいったいどんな人間だったのかをあぶりだしていく一種の戦争ミステリ(定義としては間違っていると思うけど、あくまでも一個人の謎を解き明かしていくという課程に対するイメージでそう書いている)だったなという印象を持ってしまった。

構成としたら現代の孫達(三浦春馬と吹石一恵)が当時の関係者達に取材を重ね、少しずつ祖父である宮部久蔵(岡田准一)がただの臆病者ではない慈愛に満ちた人物であるというのが解明されていくのを再現フィルムのような形で交互に見せていくのが旨くいっている。そのため上映時間が2時間を優に超えていながら(144分)ダレた感覚を抱くことはあまりなく、予想していたよりは遙かに見やすい映画だったと思っている。

ただこれを良い映画だったと判断するかどうかは僕の中ではけっこう微妙で、なにより宮部が気の良い優しい人であるというのは十分伝わるのだけれども、彼の劇中での心情部分が理解できるかと言われるとすこし困ってしまうのである(ーー;)彼が口癖のように言っていたという「死にたくない、家族の元へ帰りたい」と思う気持ちなんて、どれほど口では国のためなら死んでも構わないと吹聴している兵隊でもみんな心の底ではアタリマエのように抱いているわけで、それを戦地に赴いていながら態度で表したり言葉でも言い続ける宮部の行動が小児的ひとりよがりで綺麗事言ってるだけのKY野郎に見えてしまい、傍観者感覚で言わせてもらうとついイラっ(--#)と来てしまうのである(もし自分がその場にいたら「そんなん思てんのオマエだけちゃうわ!」って言ってるかも)

その部分がどうしても彼に感情移入することを拒ませてしまい、最後まで映画の中に入り込むのを中途半端にさせていたような気がするのだ。したがって没入度が薄くなるとちょっしたことが次々に気になってきて、例えば宮部に残った妻(井上真央)と娘を託された大石(染谷将太)の立場になって考えても奥さんが美人で子供も可愛かったから良かったものの、これが未亡人が醜女でガキに可愛げがなかったらいったいどうしただろうかとか(__;) 普通ならスルーされるようなポイントでもついツッコミたくなる気分を生んでしまったり(^_^;)

他でも殆どの人の口から語られた宮部が凄腕パイロットであるという事実も、それらしい映像があまりないため(背後に迫られた瞬間あっという間に前後入れ替わっていたようなカットはあるけど絵的なインパクトは小さい)この人の軍人としての優秀な資質をあまり感じることができなかった。また「戦闘から戻ってくるとヤツの機体はいつも傷一つ無い」と台詞で語られるくだりでも、これだけだと飛行技術ではなくサボタージュフライトが巧かったと言われているのとなんら変わらないようにも思えてしまうのだ。

なのでどうせなら敵機の中を縦横無尽に飛び回り銃弾をかわしながら常に優勢なポジションを取り、しかしそれでも相手にとどめは刺さず「あのジャップは何者だ!?」と米軍でもウワサに上がるようなキャラにしてくれた方が映画としたら面白かったと思うのだけど(冒頭とラストでそれっぽい雰囲気は出ているが、もっとそれが前面に出ても良かったのでは。それこそ「雨上がる」の寺尾聰のような現代の剣豪として描いてくれよと)

そのあたりドラマ部に乗り切れなさは多々あれども、空戦特撮場面はCGの見せ方が巧く一昔前の「男たちのYAMATO」なんかより遙かに迫力もスピード感もあってそこはかなり良くできていたと思っている(地面に叩きつけられ木っ端微塵になる機体の見せ方などはピアノ線を使った旧来のアナログ特撮ではなかなか表現できないことだろう)

それとこの映画でもっとも個人的によかったと感じたのはジジイ俳優の芝居が誰も彼も素晴らしかったところにある。殊に最初に登場する平幹二郎の画面に一五秒映っただけで頑固さ・意固地さ・偏屈さが一瞬にして伝わる演技力は特筆ものではなかったろうか(何気に背中の汗がシャツに滲んでいるのをさらっと見せたりしたのが独居老人のリアルさを異常に現していて凄かった)それ以外でも橋爪功、山本學、田中泯と彼らがなにか一言語るだけで自然と耳を傾けたくなるのはさすがなものがあり、同様にこれが遺作となった夏八木勲の存在感も見事(もっと出番あっても良かったくらいだ)

そんなこんなで見所もそれなりにはあるのだけど、最初に書いたとおり全体的には微妙な映画であったなと言うのが僕の感想である(悪くはないけど良くもないというのが一番書きにくいなあ・・・)
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12 Comments

ハリガネ  

面白い!

ワタクシ、この作品はまだ観てないのですが、
小説の方のファンなんですね。

小説の方は、映画では語りきれない部分まで描かれていますので、なんの疑問もなく、素直に感動できたのですが、
なるほど、映画ではそんなつっこみどころもあるんですね~

しろくろshowさんのツッコミ、面白かったです(´∀`)

この映画を観るのが楽しみになってきました。

2014/01/31 (Fri) 17:14 | REPLY |   

しろくろShow  

逆に今から原作読んだら

>ハリガネ さん

こんばんは、コメントありがとうございますm(__)m

難しいとは思うけど敢えて原作のまんまじゃなくてもいいから(と言いつつ僕の場合はも原作をこれから読むわけですが(__;))映画ならではのダイナミズムとか爽快感みたいなものを独自にアレンジしてくれたらもっと良かったかもな~と思いました。

ツッコミポイントは自分でも無粋な事考えてるなと思ったんですが、どーしてもそのことを頭から消すことが出来ませんでしたね(^_^;)

2014/01/31 (Fri) 21:32 | REPLY |   

晴雨堂ミカエル  

よくぞ、私が言いたかった事を言ってくれました。

 この映画、人を感涙させるように上手く作っているけど、なんか虫唾が走る。その理由をレビューで書きましたが、どうも具体性に欠ける内容になってしまいました。
 その具体的な突っ込みどころをよくぞレビューしてくれました。

 「どうせなら・・」で仰った案ですが、まさに坂井三郎がうってつけです。坂井三郎にはそんなエピソードが沢山あります。

 彼の部隊がジャワ方面に侵攻したとき、オランダの旅客機を捕捉します。上からは味方以外の飛行機を見つけたら撃墜せよとの命令を受けていますが、坂井は中に乗っている人々が女性や子供ばかりだったので、ニコッと笑いながら手を振って見逃しました。
 戦後、その旅客機に搭乗していた看護婦が赤十字社を通じて坂井の消息を調べ再会を果たしています。

 坂井はニューギニアの連合軍基地上空で僚機とともに曲芸飛行を披露して連合軍を驚かせています。後に連合軍はラバウルの日本軍基地に「すばらしい曲芸飛行だった」と祝電を届けたことから上官にばれて叱られます。

 硫黄島では15機の敵機に追い掛け回されながらも巧みな回避行動で一発も銃弾を浴びずに生還しました。
 この当時の坂井はガダルカナル上空での被弾がもとで片目は失明状態、視力がある目も以前のような超人的な視力がありません。15機もの敵に追い掛け回されたのも目が見えなかったからですが、熟練の技で切り抜けます。

 ユーチューブに坂井三郎の空戦を再現したCGがアップされていました。私はこっちのほうが感動しました。
http://www.youtube.com/watch?v=8MUOP7kCyL8
 

2014/02/01 (Sat) 09:14 | REPLY |   

しろくろShow  

名前は知っていたのですが

>晴雨堂ミカエル さん

こんばんは、コメントありがとうございますm(__)m

坂井さんのことは実はかなり前に前田日明との対談で(「紙のプロレス」誌上でしたかねー・・・)で知りました。

東宝空戦特撮の「大空のサムライ」は映画自体は未見ながら特撮関連書籍で存在を把握していたのに坂井さんのこととイコールになるまではけっこう時間がかかってしまったのです。

ご紹介していただいた動画は見た後でなるほどと思いました(ーー;) 「0」に欠けていたのはこういうオトコマエな気骨部分だったのかもしれませんね。

2014/02/01 (Sat) 20:40 | REPLY |   

晴雨堂ミカエル  

トラックバックありがとうございます。

 拙著blog記事「大空のサムライ」へのTBありがとうございます。

 最近になってDVD化されたので是非ご覧になってください。
 特撮は凄いと思います。編隊飛行の場面や空中戦の場面など、特撮を知る人ならよく撮ったなぁと感心するものばかりですが、「永遠の0」で感動した人が観たら否定的に「なんじゃこれ?」と思うかもしれません。

 また、これは邦画全体の特徴なのかもしれませんが、特撮に使用する模型は非常に細部まで精巧にできているのに、映画にすると模型まるだしなんです。同時代のハリウッド映画はリアルなのに。
 「ライトスタッフ」では普通のチャチな模型を空へ向けて放り投げて落下してきたのを撮っただけなのにリアルな墜落シーンに見えます。

 ゾンビ映画でも、アメリカは生々しく撮るのに、邦画はメイク丸出し。血と汗と体臭が伝わってこない。何故なんでしょうね?

 「大空のサムライ」佳境の被弾シーン、これも演技丸出しでした。なんか説得力が無いと思ったら、風が無いんですね。
 坂井三郎氏の著作によれば、艦上爆撃機の後部機銃の集中砲火を受けた時、風防が吹き飛ばされて、顔が風圧に晒されています。なぜ風の描写をしなかったのか不思議です。

 出演者の顔ぶれといい、一から作った模型といい、けっして下手なB級ではなく、そこそこ制作費をかけているバスなんですが、どうも安っぽさがあります。
 是非とも最新のCGでリメイクしてほしいものです。
 

2014/02/02 (Sun) 01:28 | REPLY |   

楽珍劇場  

コンニチワ。

この作品、あまり観る気は無かったんですが・・・
我がうどん県のイベント「さぬき映画祭」で上映される予定で、当日、井上真央ちゃんがゲストに・・・
ぐぬぬ、真央ちゃん見たさに行くべきか・・・

2014/02/02 (Sun) 17:15 | EDIT | REPLY |   

しろくろShow  

おそらく日専で見ることになろうかと

>晴雨堂ミカエル さん

こんばんは、コメントありがとうございました<(_ _)>

少し前からBSの日本映画専門チャンネルが毎月戦争映画を放送してくれているので、いずれ見るチャンスはあるだろうと思っています(この枠で初めて「ハワイ・マレー沖海戦」や「青島要塞爆破命令」なんかを見ました)

トクサツファンとしましては「大空のサムライ」は川北紘一特撮監督のデビュー作としてインプットされていたので、円谷英二や中野昭慶とは違う部分の表現を楽しみにしています。

2014/02/02 (Sun) 20:08 | REPLY |   

しろくろShow  

行かねば!でしょう、やっぱり

>楽珍劇場 さん

こんばんは、コメントありがとうございますm(__)m

さぬき映画祭についてはイベントの存在を知っていましたが、どうも作品のラインナップがあまり好みに合うのが毎年なくて近距離にも拘わらず(ーー;)足を運んでいませんでした。

一度ぴあフィルムフェスティバルの会場がサンポートになった年があって、その時は行ったんですが、どうせならさぬき映画祭も四国で作られたインディーズ映画の公開とセットにしてくれたらもっと興味も湧いたかなって言う気もしています。

いやそれにしても井上真央でしょ?(__;) それだけ考えたら行かなきゃ勿体ないと思いますよ(僕も数えるほどしか眼にしたこと無いけど、生で見る女優さんはホントに綺麗ですから)

2014/02/02 (Sun) 20:14 | REPLY |   

楽珍劇場  

さすがと言うべきか・・・

>さぬき映画祭
せっかくShowさんに背中を押していただきましたが、
真央ちゃんが来る回、速攻で売り切れでございました。
トホホ・・・

2014/02/03 (Mon) 12:34 | EDIT | REPLY |   

しろくろShow  

あー、それは残念・・・

>楽珍劇場 さん

こんばんは、コメントありがとうございます(・_・)(._.)

いや~、残念でしたねー(__;)

ゲストの女優さんはあと小芝風花と大原桜子くらいですか(僕はどちらもよく知らないです)

ラインナップ見たらショートムービーが面白そうだなと思ったんですがこの日健康診断なんで行けません(×_×)

21時以降も上映してくれたら良いと思うんですが、色々難しいんでしょうね。

2014/02/03 (Mon) 18:22 | REPLY |   

ポール・ブリッツ  

みよ あ~のそ~ら~に~ とおくひかるも~の~

一番だけなら歌えます(^_^;)

2014/02/04 (Tue) 18:35 | EDIT | REPLY |   

しろくろShow  

尾翼に輝く南の太陽

> ポール・ブリッツ さん

こんばんは、コメントありがとうございます<(_ _)>

誰も反応してくれないのでやはり古すぎたかと反省していたのですが、さすがですね( ̄。 ̄;)

私は「0戦はやと」を殆ど見たことはなかったんですけど(本放送は生まれる前のハズ)ナゼか子供の頃レコードが(ソノシートか8トラのテープ版だったかもしれません・・・)家にありまして、おかげで番組の詳細は知らなくても歌だけはフルコーラス歌えるようになっておりました。

未だに家族の誰が買った物かはわからんのですが(ーー;)

2014/02/04 (Tue) 20:06 | REPLY |   

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  • 2014.02.02 (Sun) 01:08 | ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋